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キャンディス・バーゲン出演「魚が出てきた日」

映画の紹介。1960年代に飛んで、1968年公開の映画。

1966年に実際に起こった、パロマレス米軍機墜落事故を題材としたブラック・コメディ。スペイン南部の上空で米軍の爆撃機B-52Gと空中給油機KC-135が衝突・墜落し、水素爆弾4つが落下した。

映画ではエーゲ海の孤島カロス島に水爆とプルトニウムと思われる核物質のはいった金属ケースが落っことされる。

監督はマイケル・カコヤニスのギリシャ・イギリス合作。

手塚治虫の「火の鳥」が載っていた漫画雑誌「COM」を、小学生の筆者は愛読していた。本誌に連載された石ノ森章太郎の実験的なイメージ中心の漫画「JUN」にこの映画のシーンが引用されていたので、この映画のことは公開当初から知っていた。

キャンディス・バーゲンが登場するのは、残り40分となってからだ。

リアルタイムに銀幕でキャンディス・バーゲンを観て惹かれたのは、1970年のアメリカン・ニューシネマの代表作の1つ「ソルジャー・ブルー」の方だ。無抵抗の先住民たちに行った無差別虐殺である、サンドクリークの虐殺を扱っている。こちらは広く知られた映画なので、紹介はまた別の時に。

キム・キャトラル出演「ゴーストハンターズ」

引き続き1980年代、おすすめの女優の出演する映画で、現在手に入りにくいものを紹介する。

キム・キャトラルは、1998年から2004年に放映されたTVシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」で世界的にブレイクした。1980年代に出演した映画も人気がある。今回紹介する1986年の「ゴーストハンターズ」と、1987年の「マネキン」が一見に値する。ただし、どちらも日本語字幕・吹き替えのDVDは現在手に入れるのは困難だ。「ゴーストハンターズ」は、配信で観ることができるが、「マネキン」は配信もない。

手持ちのDVDで、「ゴーストハンターズ」を見直した。原題はBig Trouble in Little Chinaであり、こちらを覚えておかないと、有名な「ゴーストバスターズ」と混同してしまう。

1980年代後半は、キョンシーの出る「霊幻道士」シリーズが流行り、中国が舞台のカンフーアクション・ホラーの集客力が高かったのだ。「ゴーストハンターズ」は、サンフランシスコのチャイナタウンで繰り広げられるアメリカ映画。ノンストップ・SFXアクション・アドベンチャーと銘打たれ、カンフー、モンスター、ゴースト、魔法なんでもありだ。監督は、ジョン・カーペンター。

ジャックとワンの二人組が主人公。ワンの彼女で緑の瞳を持つ、中国からの留学生が魔法使いたちにさらわれた。キム・キャトラル演じる主人公たちの相棒も、緑の瞳をしていた。

「マネキン」のキム・キャトラル。こちらはロマンティック・コメディ。

ロザンナ・アークエット出演「800万の死にざま」

前回に引き続いて、推しの女優の埋もれた作品の紹介。1986年の作品で、未だDVD化されていない。

ロザンナ・アークエット出演の映画で有名なのは、スーザン・シーデルマン監督、1985年の「スーザンを探して」と、リュック・ベッソン監督、1988年の「グラン・ブルー」。2つの名作に挟まれて、このまま忘れ去られてしまうのかと危惧する。映画全体の出来はほどほど。娼婦役のロザンナ・アークエットの魅力は充分。GYAO!で配信されていたので見直した。

監督はハル・アシュビー。ローレンス・ブロックの小説、アル中、元警官の探偵、マット・スカダー・シリーズの5作目「八百万の死にざま」が原作。原作の一人称の語りの妙味とは、映画は方向性が異なる。

アル中探偵マシュー(ジェフ・ブリッジス)に助けを求めてきた娼婦サニーが殺される。サニーの友人の娼婦サラ(ロザンナ・アークエット)に接近するマシュー。麻薬の売人エンジェル(アンディ・ガルシア)が犯人と確信でき捜査を進めるが。

印象に残るアイテムは、コールガール組織の元締めの豪邸への入り口となるケーブルカー。犯人と腹のさぐりあいをしながら食べるかき氷。あっさりと燃えてしまう、証拠となるはずの大量のコカイン。

「スーザンを探して」、「グラン・ブルー」、1989年の「ニューヨーク・ストーリー」を観て、ファンになったらどうぞ。

ナスターシャ・キンスキー主演「ハーレム」

1985年の作品である。筆者の最も敬愛する女優ナスターシャ・キンスキーが、最高に美しい時に撮られた映画として、記憶に染み付いている。彼女の出演作はほとんど観ているので、好きな作品は数多く列挙できる。筆頭に来るのは、やはりロマン・ポランスキー監督の「テス」なのだが。

「ハーレム」は、長らくDVD化されなくて中古VHSしか持っていなかった。いつの間にか、2020年9月にDVD、BDが出ていたが気づかなかった。今回価格を下げて新盤が出たので、BDを買って見直した。

ニューヨーク、ウォール街で働くダイアンは、突然何者かに誘拐された。目が覚めるとそこは砂漠の中の城。石油王のハーレムだった。

物静かで知的な石油王セリムは、映画「ガンジー」(1982)でマハトマ・ガンジーを演ったベン・キングズレーだ。今見るとどうしてもガンジーの姿が重なってしまう。「ハーレム」を最初に観たときは、まだ「ガンジー」を観ていなかったのだろう。

ハーレムという言葉から筆者が夢想するものや、VHSの煽り文句とは舞台設定がかなり異なる。セリムが父親から相続したハーレムのメンバーは、父親の親族が多く、絶対的な服従関係など存在しない。官能に溺れることなく、ダイアンとセリムの淡い純愛物語が紡がれる。そして、このハーレムはもろく簡単に壊れていく。

監督はアルテュール・ジョフェ。フランス映画である。

トム・クルーズ主演「トップガン マーヴェリック」

公開3日目にあたる2022年5月29日に映画「トップガン マーヴェリック」を観ました。実機内にIMAXカメラ6台を搭載して撮影した、現実のスカイアクションの映像には興奮させられました。現在の素晴らしい興行成績が物語るように、多くの観客の心を掴んだのは確かです。

困難なミッションに挑む機種は、現在の米海軍の主力機、F/A18E/Fスーパーホーネット。映画「インデペンデンス・デイ」などで登場した、旧来型のF/A18ホーネットより、機体が一回り大きく、エアインテークが平行四辺形状で拡大したのが外見上の特徴となります。

笹本祐一の小説「星のパイロット」の中で描かれる、ホーネットによるコブラ機動、(失速寸前まで速度を落として、機首を上げそのまま同じ方向に飛んでいく)も見ることができます。完璧なプガチョフ・コブラが進行方向に対し90度の機首上げを行うのだとしたら、それに準じた80度くらいのコブラです。

最初の「トップガン(1986)」で主役だった、懐かしのF14トムキャットも登場し活躍します。F14の米海軍への配備は1973年。可変翼機であることから当時高校生だった筆者のお気に入りだった機種です。惜しむらくは、高校の同級生に飛行機について語り合える友人がいませんでした。日本の自衛隊にも配備されたF4ファントムは、ベトナム戦争で有名になったのでさすがに知られていましたが。

映画中、第5世代戦闘機と呼ばれて、F14と対戦するのがSu-57フェロン。ステルス機の優位性は描かれていないように思えました。顔がわからないヘッドマウントディスプレイをパイロットがかぶっていると、悪役以外の何物でもありません。

蜷川実花「xxxHOLiC」

2022年4月30日、映画館で映画「xxxHOLiC」を観た。監督は、「さくらん」「ヘルタースケルター」「人間失格 太宰治と3人の女たち」の蜷川実花。CLAMPの伝説的名作と言われる漫画の、初実写映画化である。

CLAMPのダークファンタジーの世界を、蜷川実花のカラフルな映像が描き出す。

「アヤカシ」が視える高校生、四月一日君尋(わたぬききみひろ)を神木隆之介が、不思議な「ミセ」の女主人壱原侑子を柴咲コウが演じる。

映画オリジナルキャラクターのアカグモを、舞台「泥人魚」で浦上蛍一の役をこなした磯村勇斗が演った。主人公たちと敵対する魔女、女郎蜘蛛(吉岡里帆)配下の人間である。監督の思いが凝縮して詰まっているからか、最も魅力的な役に見えた。衣装のネックチョーカーが際立った存在感を発揮する。

四月一日君尋の学ランを含めて、衣装全般が凝りに凝って作り込まれていた。学ランはいずれコスプレ衣装としてファンも製作することだろう。

お話の後半は、女郎蜘蛛により閉じ込められた永遠に続く同じ日、4月1日からの脱出となる。繰り返される同じ日々の映像を観るのは、「涼宮ハルヒの憂鬱」の永遠に続く夏休み「エンドレスエイト」以来だ。言葉では実感できなくても、映像として見せられると、同じ日々を繰り返すことの辛さと一抹の幸福感がわかる。

CLAMPで最も有名なのは、「カードキャプターさくら」で、筆者の娘が子供のとき染まっていた。筆者の年代は親として作品との同世代性を感じる立場にある。

小川一水「フリーランチの時代」

SF作家小川一水の、「老ヴォールの惑星」に続く傑作短篇集。表題作が一番気に入った。

火星基地で、高度文明を持つ異星人とあっけないファーストコンタクトを果たす。これでいいのかと思えるほどの安易さで、人類は次のステップに進んでいく。

劉慈欣の「三体」3部作がSFファンの心に残した、異星人不信のトラウマは大きかった。アンディ・ウィアーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(2022年1月20日投稿)のような、成功裏に進んだファーストコンタクトの話に飢えている人は少なくないと思われる。

小川一水の短編でシリアスな感動を望むなら、「老ヴォールの惑星」の中の「漂った男」が必読の作品だ。第37回星雲賞日本短編部門を受賞。2005年8月に出版されていて、筆者は2006年8月に短編集とともに読了した。

ジョニー・デップ制作/主演「MINAMATAーミナマター」

水俣でアイガモ農法を中心とした農業を営んでいる、我が出身校、都立青山高校の同期生からFacebookで紹介された映画「MINAMATAーミナマター」をレンタルDVDで観た。水俣市での先行上映は2021.9.18で、一般公開は2021.9.23だった。BD、DVDは2022.2.18発売。

1971年、ニューヨーク。アメリカを代表する写真家の一人と称えられたユージン・スミスは、今では酒に溺れ荒んだ生活を送っていた。そんな時、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと頼まれる。(公式サイトより)

監督はアンドリュー・レヴィタス。

ユージン・スミスをジョニー・デップが演じた。映画の中心は、3年以上を水俣の中で暮らした、ユージンの再生と成長の物語だ。全世界を揺り動かした「入浴する智子と母」の写真を生み出すところがクライマックスとなる。

アイリーン役は美波。川本輝夫をモデルとした患者運動のリーダーが真田広之という配役だった。人物像が一人ひとり濃厚に描かれる。

水俣の友達は、感動したが川本輝夫の患者掘り起こし活動のシーンがないのが唯一の残念なところとしていた。水俣はチッソの城下町だったので、家族に患者がいることが知られると周りから白い目で見られ、隠していた家が多かったということだ。

写真集「MINAMATA」英語版は1975.5に世に出た。日本語版「写真集 水俣」が出版されたのは、ユージンの死後となる1980.1だ。2021.9.7に日本語版が「MINAMATA」として復刻されている。

レヴィタス監督からのメッセージがエンドロールにある。公害問題は、過去のものではなく今でも世界中のあちこちで続いているのだ。

フィリップ・K・ディック「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」

1982年のリドリー・スコット監督の映画「ブレードランナー」の原作がフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」であるが、これと並ぶディックの代表作「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」を読み直した。

「電気羊」を読んだのが、映画「ブレードランナー」を観た後で、同じころに「パーマー・エルドリッチ」を読んだはずなので、1980年代前半以来、約40年ぶりの再読となる。

「電気羊」のあらすじを家人に説明しているうちに、「パーマー・エルドリッチ」と記憶がごっちゃになっていることに気づいたので、2冊とも読み直したのだ。

「ブレードランナー」の中で、強力わかもとの映像で飛行船が宇宙移民の半ば強制的な宣伝をしていた。移民の実際の生活を描いたのが「パーマー・エルドリッチ」だ。火星の開拓地の穴ぐらの中で、バービー人形のようなパーキーパット人形とその小道具のセットにドラッグの力で没入し、環境破壊前の幸せな地球の生活を疑似体験する。移民たちはこれでぎりぎりの精神の均衡を維持しているのだった。

プロキシマ星系から帰還した実業家パーマー・エルドリッチが、新しいドラッグ「チューZ」をもたらした。しかし、チューZを1度でも使用すると、パーマー・エルドリッチの幻影、あるいは実体にずっと付きまとわれることになるのだった。三つのスティグマとは、パーマー・エルドリッチの義手、義歯、義眼を指している。

いろいろな面でディックの代表作の1つだ。

丸山晶代「ちくわぶの世界」

ちくわぶをこよなく愛するちくわぶ料理研究家、丸山晶代の著作を読破した。このブログの筆者もちくわぶラヴであり、Webで紹介記事を読み購入したのだ。

この本にも触れられているが、赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」のチビ太がいつも持っている串に刺さったおでんは小学生の時から憧れだった。上から三角、丸、ギザギザの横棒となる。三角はコンニャクで、横棒はちくわぶと信じていた。丸も本書を読むまではつくねだと思っていた。がんもどきでは大きすぎるのではないか。「おそ松くん」の時代より後、高度成長期の物価上昇の時代、ダウンサイジングが進行していたのだろう。そのサイズ感に筆者は囚われているのに違いない。

小学校の放課後、公園で遊んでいるとまれにおでんの屋台がやって来ることがあった。乏しい小学生のお小遣い事情が許せば、ちくわぶ1個だけ買ったのだ。1年に1度あるかないかのぜいたくだった。

筆者は2歳から17歳まで、東京の目黒区原町に住んでいた。山の手の下町と言われる地区だったが、この地域ではちくわぶがごく普通の食べ物だったのは間違いない。メリケン粉の固まりで、栄養分はほとんど炭水化物と、ちくわぶが好きでない人がいるのは確かだが、東京近郊だけで食べられているのを知ったのは最近のことでびっくりした。

メリケン粉:小麦粉のこと。筆者の親の世代はメリケン粉と呼んでいた。

おでん以外の、ちくわぶを用いたレシピも数多く紹介されている。

ちくわぶ全国拡散をめざす同志よ。まずこの本を手に取ることから始めよう。