カテゴリー別アーカイブ: 映画

田中敦子主演「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」

攻殻機動隊の草薙素子少佐が代表作の声優、田中敦子が2024年8月20日永眠された。61歳だった。

攻殻機動隊は士郎正宗の漫画が原作。

押井守監督による劇場用アニメ映画第1作「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」が1995年に、第2作「イノセンス」が2004年に公開された。押井守監督作品と、神山健治監督の「攻殻機動隊S.A.C.」シリーズで、田中敦子が少佐を演じている。田中敦子の少佐とは、とても長い付き合いになったと感じる。

黄瀬和哉監督の「攻殻機動隊 ARISE」では、坂本真綾が少佐を演じた。「攻殻 ARISE」はアンチも多いが、筆者はファンである。

手持ちのDVDで押井守監督の第1作を見直した。

ナスターシャ・キンスキー出演「イントルーダー 侵入者」、ロザンナ・アークエット出演「イントルーダー 怒りの翼」

似たタイトルの映画が2つあり、2つとも筆者推しの女優が出演してる。映画の傾向は全く異なる。

「イントルーダー 侵入者」は、1999年のサスペンス映画。シャルロット・ゲンズブール主演、デヴィッド・ベイリー監督。ナスターシャ・キンスキーは38歳。主人公キャサリンの夫ニックの仕事仲間、金融関係の実業家バッジの役。シックなスーツに身を包んでいるシーンが多い。

キャサリンは、強盗から助けてくれたニックと結婚し、ニックのアパートに引っ越してくる。それをきっかけに、見知らぬ侵入者がキャサリンを狂わせようと怪現象を起こし続ける。

異なる時空間に落ち込んでしまった前妻ステラの説明に、現代物理学を持ち出す必要があったのか。怪異を超えた描き方はしてないので、ホラーのままでも十分だったのでは。

「イントルーダー 怒りの翼」は、ベトナム戦争、米海軍を描いたB級戦争映画。A-6艦上攻撃機(イントルーダー)ファンの人のための映画。頭が丸いところが可愛い。1990年公開。ジョン・ミリアス監督。

舞台は1972年の設定。和平協定でハノイ爆撃が許されず、不満で一杯のA-6操縦士グラフトン大尉は、相棒の爆撃航法士モーグの戦死で感情が押し潰された。立ち直った後、後任の爆撃航法士コールと共に独断でハノイ爆撃を行う。

ロザンナ・アークエットは、モーグの住んでいた家の新しい住人キャリーの役。

クリス・マルケル「ラ・ジュテ」

近未来、第3次世界大戦後廃墟となったパリで少年時代の記憶に取り憑かれた男を、「フォトロマン」と呼ばれるモノクロ写真を連続し映す手法で描く、クリス・マルケル監督の短編。1962年のフランス映画。

押井守監督が「『ラ・ジュテ』に出会わなかったら、映画監督にはなってなかった」と語る作品だ。

戦争を生き延びた数少ない人類は、放射能を避けて地下に住む。支配者と奴隷に分けられ、奴隷は科学者たちの時間航行能力開発の人体実験に使われた。多くの奴隷が死亡する中、ある男の時間航行能力が発現・成長した。男は少年時代にオルリー空港の展望デッキで見た、魅力的な女性と、その側にいた男性の急死という記憶に取り憑かれていたので、時間を超えることに耐えられたのだ。

網膜の電気生理を専門にしていた筆者は、かつての自分の似姿を映画の中の科学者に見出す。

雨宮慶太「ゼイラム」

1991年の雨宮慶太監督作品。2003年にDVDでも販売された。

あらすじはピクシブ百科事典より。

異星人の賞金稼ぎイリアは、逃走した太古の生物兵器ゼイラムを捕獲するため、地球上に制限時間付きの無人密閉空間ゾーンを作る。ところが些細な偶然から、二人の地球人がそこに入り込んでしまう。ゾーンは制限時間を迎えると、空間の中身ごと消滅する。足手まといの彼らを守りながら敢行されるイリアのゼイラム捕獲作戦とゾーンからの脱出は成功するのか。

ゼイラムの姿は三度笠を被った人間に似ている。笠の中心に小さな能面のような顔があり、粘液に包まれ長い頸部が伸び縮みする。ここの造形が最高に不気味だ。

イリアを演じたのは森山祐子

ヴィクトリア・アブリル主演「死んでしまったら私のことなんか誰も話さない」

1995年のスペイン映画。DVDになっていない。アグスティン・ディアス・ヤネス監督。タイトルが長いことで有名な映画だが、なかなかの名作だと思う。

メキシコシティ。麻薬取引の場に呼ばれた売春婦グロリア(ヴィクトリア・アブリル)の目の前で、潜入捜査の二人の刑事が殺された。マネーロンダリングの組織ファイルが彼女の手に渡る。グロリアはマドリッドに送還された。夫は人気闘牛士だったが牛に突かれて3年前から植物状態。姑のマリア(ピラル・バルデム)が息子を看病し、アパートのローンを返済してきた。彼女はグロリアに何も問いたださず、ただ自立した女になれと説教する。グロリアはアル中、中卒の定職を持たない売春婦で精神的に情けなく弱い。

スペイン人にとって最大のご馳走であるメルルーサは怖い顔をしてる。姑の友人達とのホームパーティで、グロリアはメルルーサ料理を振る舞いたかった。定職探しに頑張っていたのに、アル中の売春婦に戻ってしまう。

半分は組織の内紛のため、残り半分は自力で暗殺の手を逃れた。姑の支援が功を奏して、弱かったグロリアはゆっくりと強くなっていく。

ブリジット・フォンダ出演「アイアン・メイズ ピッツバーグの幻想」

ブリジット・フォンダの抜けるような白い肌に感銘を受けたことがあるなら、観ないわけにはいかない映画。DVDになっていない。吉田博昭監督作品。

日本人青年実業家のスギタ(村上弘明)は、ピッツバーグ郊外の製鉄所跡地を買収し大遊園地を建設しようとしていた。彼の妻、クリスをブリジット・フォンダが演じる。スギタは、製鉄所内で何者かに襲われ瀕死の重症を負った。

1991年の映画で日本はバブル経済の最期の足掻きの時期。現実では、その後の経済復興に失敗し失われた30年の始まりの時だ。これに対し、現実のピッツバーグの方は、1970年代に地元鉄鋼業が衰退に転じ工場は相次いで閉鎖に追い込まれ、街には大量の失業者があふれた。しかし1980年代には、従前の産業構造から脱却し、ハイテク、保険、教育、金融を中心とした地域経済へと移行することにより活気を取り戻している。

製鉄所跡の廃墟、巨大な鉄の迷宮は描き出されている。これに対峙する存在が、御曹司のコキュの道化ではちょっと。あの頃は、ダブルのスーツが流行ったなあと男性ファッションの懐古に浸るしかない。

あくまでも、ブリジット・フォンダを観るために時間を割いているのだ。

高山一実原作 映画「トラペジウム」

乃木坂46 一期生、現役のアイドルが2018年に小説を出版した。30万部の大ヒットとなり、アニメ映画が公開中である。

城州東高校1年生の東ゆうは、他の3つの方角、西、南、北の美少女を仲間にして、アイドルとしてデビューするセルフプロデュースを行なっている。身勝手で強引な意図から始まった計画だが、「東西南北」の4人はとても仲の良い友達となった。

ロボコン大会、文化祭などのイベントを経て、北の少女、亀井美嘉が行っていたボランティア活動に参加した4人は、ゆうの目論見どおりテレビ出演を果たし、そこから「東西南北」アイドルデビュープロジェクトが発動された。しかし問題が発覚した。

ちょうど筆者の高校(都立青山高校)のクラス会が、50年の時を隔てて開催された。学年全体での同期会は2010年に始まっていたが、クラス単位で集まるのは初めてだったのだ。物故者を含めて総勢44名の半数22名がLINEでつながり、夜の会にはそのうちの16名が参加した。このメンバーで過ごした期間はたったの2年間。過去を振り返る内容よりも、圧倒的に現在やこれからの話題が中心だった。

「東西南北」4人の友情は壊れず続いている。これがどんなに貴重なことか。細切れの「トラペジウム」本編映像は、YouTubeで公開されている。「彼氏がいるんだったら友達にならなきゃよかった」編は、ゆうの主人公らしからぬ言動が注目を集めた。

ジョン・カーター「ファトゥワ」

ファトゥワとは、イスラム教においてイスラム法学に基づいて発令される裁断。

2006年のほとんど誰にも知られていない、政治サスペンス映画。ジョン・カーター監督。レンタルDVDで観た。意外と面白い。

ローレン・ホリー主演。反テロの中心的役割を務める米国上院議員マギー。夫との仲が冷めきったまま、政治活動で忙しく飛び回っていた。テロリストと夫の親族のギャング双方から、命を狙われることとなる。

「宇宙家族ロビンソン」の、1998年映画版リメイク「ロスト・イン・スペース」で、反抗期の少女である次女のペニーを演じたレイシー・シャベールが、社会に対して反抗期の大学生、マギーの娘の友人ノアを演じる。この方面から、この映画に辿り着いた。

ケン・ラッセル「肉体の悪魔」(1971)

レーモン・ラディゲの小説とは無関係。17世紀のフランスで起こった「ルーダンの悪魔憑き事件」を題材としたケン・ラッセル監督の映画。日本国内ではDVDは未発売。1971年の公開時、筆者は中学生、映画館で観て深く心に刻まれた。おそらくVHSだろうが、YouTubeで題名を変えて字幕付きで公開されていた時があった。その際保存した映像を見直した。

ケン・ラッセルの映画では、1974年の「マーラー」、1975年の「トミー」も好きだが、「肉体の悪魔」が筆者にとっては最高傑作である。DVDが制作されないのは、カトリック教会の反発を懸念しているためだろうか。

フランスの地方都市ルーダンの市長代理を務めるグランディエ司祭はカリスマ的リーダーシップとともに、男性的魅力を存分に発揮していた。パリの宮廷では枢機卿リシュリューが実権を握り、新教徒の台頭を防ぐため地方都市の自治を廃止させようとしていた。グランディエは女子修道院の尼僧たちにも憧れの的だった。背中が醜く曲がった修道院長ジャンヌは一方的な恋心から、淫らな妄想を思い描いていた。嫉妬からグランディエを悪魔つかいだと騒ぎ立てたジャンヌが、グランディエ失脚に利用され、悪魔憑き騒動の拷問同然な調査が始まった。行き着く果ては、グランディエの火炙り処刑。

性描写、残酷描写、冒涜的イメージの氾濫が本作品を、宗教権力に対する反体制映画にしている。

ヴィム・ヴェンダース「PERFECT DAYS」

最初に私たちは平山の1日をしっかりと追う。そしてそれは繰り返される。けれどそれは平山にとって繰り返しではない。いつもすべてが新しいのだ。

脚本の冒頭にこう書いてあるそうだ。

ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の映画「PERFECT DAYS」を2024/1/3映画館で観た。

トイレ清掃員、平山の毎日が描かれる。

仕事で使う軽自動車の中で、ミュージック・カセットテープを必ず聞く。パティ・スミスのアルバム「Horses」の中の「REDONDO BEACH」が物語上重要な役割を担っていたので嬉しくなった。でも、他の70年代の楽曲は知らなかった。

浮浪者役、田中泯の「をどり」が目を惹く。薄れた記憶から拾い上げると、筆者は70年代にハイパーダンスを観ている。陰茎に包帯を巻いただけで、褐色に塗った裸体で踊った。

今回の映画は、渋谷区の公共トイレを著名なクリエイターの手により新たにデザインする、THE TOKYO TOILETプロジェクトから生まれた。日に3回は清掃が入りとてもきれいだ。対照として、陸秋槎が「ガーンズバック変換」の中で紹介してくれた映画「トレインスポッティング」冒頭の汚物まみれのトイレを思い出した。