カテゴリー別アーカイブ: 映画

ヴィム・ヴェンダース「まわり道」

ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX IとしてラインナップされたBDで、映画「まわり道」を観た。1975年の作品である。

「まわり道」は、ロードムービー三部作の第2作に当たる。第1作が以前このブログでも触れている、「都会のアリス」だ。ブログでは一部辛辣なコメントも付けたが、じわじわと映画の良さが思い出され、BD BOX Iを手に入れることになった。

第2作「まわり道」はペーター・ハントケ脚本で、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』が下敷きにされている。登場人物の名も同作から。

筆者はオペラに全くと言っていいほど接していないので、ミニョンという名に対して感情をかき乱されるようなものは持っていない。オペラ「ミニョン」をかろうじて知ってはいたが。

この芸人の少女ミニョンを、本作が映画デビューとなるナスターシャ・キンスキーが演じている。彼女は映画公開時は14歳であり、撮影時は13歳だったようだ。幼さを残していながら、女性としての魅力を充分に発揮している。

作家志望の主人公の青年ヴィルヘルムが旅立ち、様々な人と出会い、ともに過ごしながらも別れていく。最後にドイツ最高峰のツークシュピッツェにたどり着いた時には、彼一人となっていた。

ウェス・アンダーソン「アステロイド・シティ」

「グランド・ブダペスト・ホテル」で知られる、ウェス・アンダーソン監督の最新作「アステロイド・シティ」を映画館で観た。

舞台は1955年アメリカ。人々が豊かな日々を謳歌し、アメリカが最も輝いていたと言われる時だ。宇宙開拓への夢も広がり、誰もが不可能なことなどないと信じていた。そんな中、人口わずか87人の砂漠の街アステロイド・シティで開かれたジュニア宇宙科学賞の祭典に、思わぬ訪問者がやってきた!

輝けるアメリカといえば、1955年は、ちょうど筆者の叔父(地質学者)がフルブライト奨学金を獲得して、氷川丸に乗ってアメリカに渡った年だ。

映画は枠物語の構造で、新作演劇《アステロイド・シティ》を紹介するテレビ番組の中に入れ子になっている。

レビューはWebに多数あるが、1つリンクを張っておく。

https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/asteroidcity-review-202309

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」

潟湖干潟(せきこひがた又は、かたこひがた)の生態系を描いた小説であり、その映画化である。多様な動植物が調和する干潟生態系の、環境に対する重要な役割については1970年代ごろから叫ばれているが、すでに多くの干潟が干拓され消失してしまった。小説と映画の舞台は1969年を中心とした日々。映画では豊富な自然を映像で見ることができる。

干潟についての解説は千葉県のサイトがわかりやすかった。

あらすじは、映画公式サイトから引用。

1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、裕福な家庭で育ち将来を期待されていた青年の変死体が発見された。容疑をかけられたのは、‟ザリガニが鳴く”と言われる湿地帯でたったひとり育った、無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に見捨てられ、学校にも通わず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、ひとりで生き抜いてきた。そんな彼女の世界に迷い込んだ、心優しきひとりの青年。彼との出会いをきっかけに、すべての歯車が狂い始める…。

小説は、一つひとつの章は短く読みやすい。

カイアが書いたような図鑑本。昔、筆者はいろいろ所有していた。

瀧内公美主演「彼女の人生は間違いじゃない」

瀧内公美が主役の金沢みゆきを演じる。2017年の映画。場所は福島。レンタルDVDで観た。

震災で母を失い、自宅は汚染地域にあり仮設住宅で父と暮らしながら、昼間は地元の市役所で働き、週末は東京・渋谷でデリヘル嬢をやっている。

瀧内公美は、実際にデリヘルをしている女の子などから取材して役作りをした。東北の娘が「地元にいると自分が保てなくなりそうになった」と言っていたのが印象的と発言している。

監督は廣木隆一。同名の自作小説の映画化である。監督は福島出身。

2020年の映画「アンダードッグ」でシングルマザーのデリヘル嬢、明美を演じていたのも瀧内公美だったことに今まで気がつかなかった、

ベルナルド・ベルトルッチ「暗殺のオペラ」

ベルトルッチのファシスト3部作の第1作、「暗殺のオペラ」をAmazon prime videoで見直した。イタリアでの公開は1970年だが、日本での公開は1979年であり、リアルタイムで映画館で観ているのだ。第2作の「暗殺の森」はイタリア公開は1970年、日本での公開は1972年であり、映画館でヨーロッパ映画を見るような、おませな年齢に筆者は達していなかった。後になってからレンタルビデオで観た。第3作「1900年」は、イタリア1976年、日本1982年で、5時間16分の大作だが映画館で観ている。

「1900年」は DVD販売まで、気が遠くなるほど待たされたが、「暗殺のオペラ」のDVD、BDも権利問題で長らく手に入らなかった。今は配信で見れるので、幻の映画ではなくなった。

あらすじはそっくりそのまま引用する。ムッソリーニによるファシズム政権下の1936年、ひとりの抵抗運動の闘士が北イタリアの小さな町の劇場でオペラを観劇中、何者かに暗殺されるという事件が発生。凶弾に倒れたアトスは以後、町の伝説的英雄として語り継がれる存在に。彼の名と面影をそっくり受け継いだ息子のアトスは、事件から20数年後、父の愛人だったドレイファスから招かれて町を訪れ、今なお多くの謎に包まれた父親の死の真相の解明に乗り出すのだが…。[シネフィル]

サーカスから逃げたライオンが死に、ライオン料理となって運ばれてくるというエピソードがある。このメタファーてんこもりのシーンの意味するものはなんだったのだろう。権力者にあらがうという意味と捉えるのが一般的な解釈。タイトルロールにもライオンの絵が描かれているので、なにか重要なものがあるはずなんだが。

一緒に見に行ったクリエイターの人が、取ってつけたようなシーンだと猛烈に批判していたので覚えていた。

原作はJ.L.ボルヘスの小説「裏切り者と英雄のテーマ」。「伝奇集」に収められているが、読んでいなかった。

ベルナルド・ベルトルッチ「革命前夜」

映画「殺し」で監督デビューを22歳にして果たした、ベルトルッチの第2作「革命前夜」(1964年)をレンタルDVDで観た。

イタリア、パルマの青年ファブリツィオは、ブルジョワ階級でありながら共産党員のマルクス主義者だった。同じブルジョワ階級のクレリアと婚約しているが、別れるつもりになっていた。親友アゴスティーノの突然の死にショックを受ける。ミラノから母親の妹である若い叔母ジーナがやって来た。二人は近親相姦の関係にはまりこんでいく。

魅力的な叔母を、アドリアーナ・アスティが演じる。精神疾患の転地療養のためパルマに来ていて、ミラノには帰れない。映画はアドリアーナ・アスティの演技に全部持っていかれた。

エリザベス・モス主演「ハースメル」

エリザベス・モスの怪演が全てと言って過言ではない映画。Amazon prime videoで観た。

あらすじは、公式サイトより一部修正して。

女性3人組のパンクロックバンド「サムシング・シー」。
サムシング・シーのメインボーカル「ベッキー・サムシング」(エリザベス・モス)は、パンクロック界のカリスマ的存在。

彼女の音楽性と過激なパフォーマンスは熱狂的なファンを生む一方で、その言動は常に世間の注目を集めることとなり、周囲からの批判やプレッシャーによって、ベッキーは心身のバランスを崩している。

人気にも陰りが出て、その焦りから呪術師に心酔し、ドラッグやアルコールに溺れきっていくベッキー。バンドメンバーとの間にも大きな亀裂が生じ、常軌を逸した行動が引き金となって、ついに、舞台から引きずり降ろされる。

それから1年後、バンド活動を休止し、表舞台から退いたベッキーは、アルコールやドラッグを絶ち、少しずつ自分を取り戻そうと日々葛藤していた。そんな彼女を救ったのは、最愛の娘タマの存在。

ベッキーは自分の過去と向き合い、バンドメンバーやかつての仲間の力を借り、4年ぶりにライブを行う。

監督はアレックス・ロス・ペリー。

若手のバンドAkergirlsメンバー役で、カーラ・デルヴィーニュが出演してる。映画内ではゆっくり見れなかったAkergirlsの動画がYouTubeにあった。

https://youtu.be/J9jf1qdUU4Q

癖の強い映画で、見るのが辛くなる場面も多いが、ステージ活動を行っている人は見るべき。

ケイト・ベッキンセイル、カーラ・デルヴィーニュ出演「天使が消えた街」

2015年の映画。映画「アンダーワールド」シリーズを支えたケイト・ベッキンセイルと、映画「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」で主役のひとりローレリーヌを演じた、モデルと女優で活躍するカーラ・デルヴィーニュが共演している。レンタルDVDで観た。

監督は、マイケル・ウィンターボトム。

4年前にイタリアのシエナで、イギリス人留学生エリザベスが殺害された。ルームメイトのアメリカ人留学生ジェシカとその恋人が殺人犯として逮捕され、一審判決は有罪だった。控訴審が始まっている。

映画監督で脚本家の、トーマス(ダニエル・ブリュール)が事件の映画化のための調査でシエナに来た。年代の違うふたりの女性と良い仲になるも、映画の構想はまとまらず、脚本は遅々として進まない。

メディアやプロダクションが考える、一般受けする映画の脚本を書くことには抵抗がある。ゲーテの「神曲」三部作の構成を取り入れようと誇大妄想を抱いてみたり、知人が真犯人ではないかと疑って、馬鹿げた振る舞いをしてしまう。そして、「神曲」の第三部「天国篇」のみに従って、被害者エリザベスを讃える映画を作ろうと決意する。

前作品が失敗に終わったトーマスの復帰作となるはずだが、見ていてとにかく仕事が遅いのにイライラさせられた。ケイト・ベッキンセイルとカーラ・デルヴィーニュとの逢瀬が中心となって描かれる。緻密な犯罪サスペンス映画を期待して観てはいけない。

キャンディス・バーゲン出演「魚が出てきた日」

映画の紹介。1960年代に飛んで、1968年公開の映画。

1966年に実際に起こった、パロマレス米軍機墜落事故を題材としたブラック・コメディ。スペイン南部の上空で米軍の爆撃機B-52Gと空中給油機KC-135が衝突・墜落し、水素爆弾4つが落下した。

映画ではエーゲ海の孤島カロス島に水爆とプルトニウムと思われる核物質のはいった金属ケースが落っことされる。

監督はマイケル・カコヤニスのギリシャ・イギリス合作。

手塚治虫の「火の鳥」が載っていた漫画雑誌「COM」を、小学生の筆者は愛読していた。本誌に連載された石ノ森章太郎の実験的なイメージ中心の漫画「JUN」にこの映画のシーンが引用されていたので、この映画のことは公開当初から知っていた。

キャンディス・バーゲンが登場するのは、残り40分となってからだ。

リアルタイムに銀幕でキャンディス・バーゲンを観て惹かれたのは、1970年のアメリカン・ニューシネマの代表作の1つ「ソルジャー・ブルー」の方だ。無抵抗の先住民たちに行った無差別虐殺である、サンドクリークの虐殺を扱っている。こちらは広く知られた映画なので、紹介はまた別の時に。

キム・キャトラル出演「ゴーストハンターズ」

引き続き1980年代、おすすめの女優の出演する映画で、現在手に入りにくいものを紹介する。

キム・キャトラルは、1998年から2004年に放映されたTVシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」で世界的にブレイクした。1980年代に出演した映画も人気がある。今回紹介する1986年の「ゴーストハンターズ」と、1987年の「マネキン」が一見に値する。ただし、どちらも日本語字幕・吹き替えのDVDは現在手に入れるのは困難だ。「ゴーストハンターズ」は、配信で観ることができるが、「マネキン」は配信もない。

手持ちのDVDで、「ゴーストハンターズ」を見直した。原題はBig Trouble in Little Chinaであり、こちらを覚えておかないと、有名な「ゴーストバスターズ」と混同してしまう。

1980年代後半は、キョンシーの出る「霊幻道士」シリーズが流行り、中国が舞台のカンフーアクション・ホラーの集客力が高かったのだ。「ゴーストハンターズ」は、サンフランシスコのチャイナタウンで繰り広げられるアメリカ映画。ノンストップ・SFXアクション・アドベンチャーと銘打たれ、カンフー、モンスター、ゴースト、魔法なんでもありだ。監督は、ジョン・カーペンター。

ジャックとワンの二人組が主人公。ワンの彼女で緑の瞳を持つ、中国からの留学生が魔法使いたちにさらわれた。キム・キャトラル演じる主人公たちの相棒も、緑の瞳をしていた。

「マネキン」のキム・キャトラル。こちらはロマンティック・コメディ。