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日本総合悲劇協会「不倫探偵〜最後の過ち〜」

IMG_15762015年6月4日、本多劇場にて大人計画プロデュース、日本総合悲劇協会「不倫探偵」を観ました。作・演出は天久聖一と松尾スズキのタッグマッチ。

本多劇場に行くのは、なんと9年ぶり。その9年前にも20年ぶりに本多劇場に行きましたと、観劇体験を川崎市眼科医会報に書いているのですが。下北沢の駅から街並みまですべて工事中で、方向感から喪失し劇場にたどり着くまでスマホ頼り。松尾スズキの芝居を観るのも、2013年の「マシーン日記」東京芸術劇場以来2年ぶり。そう、私は松尾スズキの熱心なファンではありません。まことに申し訳ありません。実は、二階堂ふみ出演が観劇の動機です。二階堂ふみの舞台への出演は今回が3作目ですが、これまでの「八犬伝」「不道徳教室」ともにすべて観ているのでした。

舞台は、漫画的あるいは通俗小説的な設定と笑いが全開。キャラクターはすべて何かのパロディーぽい。いきなり最初から、不倫探偵と人妻が自己紹介。役者の歩き方まで、非現実的なカクカクした動きが決められていました。

平田オリザの提唱した現代口語演劇に始まるリアリティ重視の演劇が、1990年代以降の演劇ではメインストリームとなった感があります。この静かな演劇も、ドグマ化してしまうと息苦しいものです。静かな演劇に対し絶叫の演劇と言われた1970年代の演劇、現代演劇がアングラ演劇と言われた時代、それまでの標準、規範であった新劇との対決構造の上に演劇はありました。現在の演劇シーンはなんでもありですから、もうこんな対決構造を持ち出す必要はありませんが、ドグマに対して反抗するのが人間のならいでしょう。歴史的には、大人計画の演劇は、現代口語演劇理論より古くから世に受け入れられていますが。

そして、二階堂ふみ。前2作とは、まったく異なった演技。ダンスのために相当な肉体訓練を積んだはずですが、その苦労など微塵も感じさせずに、サラッと演じていました。

一番の問題は、観客である私が、体験を共有するのに前提となる江戸川乱歩などの探偵小説をまったく読んだ経験がないことでしょうか。クラブで松尾スズキが唄うシーンでも思い浮かべたのは、デヴィッド・リンチの映画「マルホランド・ドライブ」でした。まあ、でも爆発的な笑いの前では些細な問題ですね。