2018年1月25日に、池袋の東京芸術劇場シアター・イーストで唐十郎作、福原充則演出の「秘密の花園」を観た。東京芸術劇場がプロデュースするRooTSという企画の第5弾となる。アングラ世代の現代演劇の戯曲を、若手・気鋭の演出家が新たに解釈するというシリーズで、前作「あの大鴉、さえも」竹内銃一郎作、小野寺修二演出、小林聡美、片桐はいり、藤田桃子出演は、演出、演技ともになかなかおもしろかった。2016年10月のことだ。このブログに書くことはサボってしまった。
さて、唐十郎「秘密の花園」の初演は1982年で、本多劇場のこけら落とし公演にあたった。演出は文学座の小林勝也で、緑魔子、柄本明、清水紘治が出演した。この舞台を観たかどうかの記憶がどうもはっきりしない。1982年は、筆者は医師として2年目の丁稚奉公の時代であり、芝居を観に行く心の余裕はなかったはずだ。この舞台のDVDを2007年に購入して観ていること、1998年10月に鬼子母神でやった劇団唐組、唐十郎演出の「秘密の花園」を観ていること、以上と、劇団第七病棟の公演で、緑魔子の舞台をよく観ていたことから、記憶の混乱・捏造が起こっているようなのだ。
劇団唐組は、唐十郎が劇団状況劇場を解散した後に結成した、状況劇場と同じく紅テント公演をおこなう劇団で、旗揚げは1988年である。1998年の公演では、緑魔子が演ったいちよ/もろはを飯塚澄子が、柄本明のアキヨシを堀本能礼が、清水紘治の大貫を稲荷卓央が演じた。
唐十郎は、役者に合わせて脚本を当て書きする手法を用いる。「秘密の花園」は緑魔子に当て書きされている。1982年のころ、緑魔子、石橋蓮司の所帯に、あがた森魚が居候していたので、この人物相関図を唐十郎に書かれたと噂されていた。真実のほどは知らないが、だとすれば大貫の役は石橋蓮司に当たり重要であることがわかる。清水紘治、稲荷卓央の配役もうなずける。
今回の公演では、大貫を田口トモロヲが演った。もっとかっこよく、内に秘めたるものが大きい役をイメージしてたので期待と違った。アキヨシの柄本佑は、どうしてもお父さんと比べられてしまうのがかわいそうだが悪くはなかった。いちよ/もろはの寺島しのぶは、客観的にはいい演技と評価できるのだが、筆者の世代が緑魔子に抱く特別な感情の対象とはなりえない。
思春期のころからの憧れの女優が、自分の属する現代演劇の世界にやって来たのが、1976年12月の劇団第七病棟の旗揚げ公演「ハメルーンの鼠」だった。唐十郎の脚本で、演出は石橋蓮司ではなく黒テントの佐藤信だった。第2回公演「ふたりの女」は、1979年に町屋の第七病棟アトリエで公開された。このころちょうど町屋でバイトをしてたので、狭い路地が連なる街並みでも迷子になることはなかった。近い距離で緑魔子を見れたので喜びもひとしおだった。