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劉慈欣「三体」

我が国でも発売後あっという間にベストセラーとなった。中華人民共和国の作家、劉慈欣のSF小説である。日本語版が2019.7.4に出た。

アジア人の作家として初めてヒューゴー賞を受賞。マーク・ザッカーバーグ、バラク・オバマらが絶賛している。読みやすく娯楽性に富みおもしろい。

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望したエリート女性天体物理学者、葉文潔は、宇宙に向けて今までにない方法を用いてメッセージを発信してしまう。とある三重星系は古典力学の三体問題の世界であり、予測できない天体運行の中で文明の発展と滅亡を繰り返す三体星人がいた。

文化大革命の描写が鮮烈だ。革命が始まった頃、私は小学生だったが、日本の出版メディアが毛沢東語録を模した赤いビニール表紙の手帳をおまけに付けて、紅衛兵ブームを煽っていたことを覚えている。流行が過ぎ去ったあとは革命の批判だけが残った。ほめたたえていたのは何だったのだろう。釈然としない思いが記憶にある。

スティーヴン・ウェッブの著書、「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」を関連書籍として勧めよう。2004年初版で、私が読んだのは2005年になってからだ。物理学者エンリコ・フェルミによるフェルミ推定を初めて紹介した書籍である。「シカゴにはピアノの調律師が何人いるか」というのが典型問題だ。グーグルの入社試験でも出題された。フェルミ推定によれば、われわれと通信しようとする地球外文明が百万あってもおかしくないのに、なぜどこにいるかわからないのだろうか。

新版は「広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由」とボリュームアップしているが、未読である。

三体星人の惑星は文明崩壊と再生の過程で、ロッシュ限界を越え一部分が分離し月を形成した。地球は、月の潮汐力により自転速度が抑えられている。月がなければ強風が荒れ狂う世界となっていた。また、月が地球の自転軸の傾きを安定化させている。「もしも月がなかったら」ニール・F・カミンズ、邦訳1999年も紹介しよう。同じく2005年に読了している。文明の発達には月の存在が欠かせないということだ。