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ルイス・キャロル「ふしぎの国のアリス」岩崎民平訳註

Facebookで、自分の好きな本の表紙を7冊紹介するのが流行っています。読書文化の発展のためという趣旨のようです。ブログで真似してやってみようと思い立ちました。映画なら、自分にとって重要な上位に位置する作品はだいぶ以前から順位付けしているのですが。1位はキューブリックの「2001年宇宙の旅」。本となると、選択肢が多すぎて意外と難しい。でも、第1位はこの本しかありえません。原文でも、翻訳でも幾度となく読みふけりました。

研究社の英和辞典で有名な岩崎民平が、翻訳と註釈を行い原文と併記で対訳という形で出版したのが、写真の研究社新訳註叢書だったと思います。Amazonのサイトで書影を探し出しました。旧字の「國」ではなく「国」だった気もしますが。自分の持っていたものは繰り返し手に取りボロボロになってしまい、別の訳者による新しい翻訳や原文も簡単に手に入るようになったことから、だいぶ前に捨ててしまっています。

多数の言葉遊びが含まれ、鞄語と言われる2つ以上の言葉の意味を1つの言葉に詰め込んだ合成語が頻出する文の味わいを逃さず読むのに、多くの註解とともに原文に当たれる本書はとても役立ちました。また、現代英語と比べるとイディオムがあまり出てこない、19世紀ヴィクトリア朝の格調高い文章です。大学受験とは無縁なのが良かった。

挿絵はオリジナルのジョン・テニエルのものが使われていました。

2冊目ももう決めていますがいつ投稿できるかはわかりません。

草野原々「大絶滅恐竜タイムウォーズ」

SF作家、草野原々の作品を今までに読んだことがあり、「良し」あるいは「気になる」と捉えている読者には解説は不要。ぜひとも勧めよう。デビュー作、「最後にして最初のアイドル」に負けない規模を持つ、物語とはなにか、キャラクタとはなにかを問いかける作品である。

さあ彼女の「内面を想像して、共感して感情移入しましょう」。

このシリーズの第1作、「大進化どうぶつデスゲーム」を、先に読んでいたほうがこの小説をより楽しめる。前作は18人の少女たちをすべて一人称で語らせる実験作であったが、話の盛り上がりとその帰結という物語性は存在した。本作では、物語はメタ的にどんどん解体されていく。地球生物の進化の歴史、宇宙規模の物理学など、興味深いガジェットに惹きつけられている間に、遠く離れた地平線に墜落することとなる。

草野原々は、「最後にして最初のアイドル」で、2016年に第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞。電子書籍で商業デビュー。同作は2017年、第48回星雲賞日本短編部門を受賞。2018年に「エヴォリューションがーるず」「暗黒声優」を加えた短編集「最後にして最初のアイドル」が刊行された。メタフィクション「これは学園ラブコメです」(2019年)、電子書籍「【自己紹介】はじめまして、バーチャルCTuber 真銀アヤです。」(2019年)がある。