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シャーロット・ランプリング主演「愛の嵐」

前回の「未来惑星ザルドス」に引き続いて、シャーロット・ランプリング繋がりで、手持ちのDVDから「愛の嵐」を見直した。

シャーロット・ランプリングは、これから公開のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「DUNE」に、教母ガイウス・ヘレン・モヒアムとして出演するので、今までの作品をおさらいしておこうという意図もあった。

「愛の嵐」は、リリアーナ・カヴァーニ監督の1974年の映画。ナチス帽にサスペンダーで歌い踊るユダヤ人少女の姿が、多くの観客の心に強烈な印象を残していることだろう。

ナチス親衛隊将校だった過去を隠して、ウィーンのホテルの夜番フロント兼ポーターとして働く男マックスの前に、かつて強制収容所で弄んだ女性ルチアが、高名なオペラ指揮者の妻となって客として現れた。最初はすぐにもウィーンを出ていこうと主張したルチアだったが、なぜか夫を巡業公演に送り出し一人残った。ルチアとマックスは、二人して、血と痛みそして飢餓を伴った、出口のない狂気とも言える病的な恋愛関係に溺れていく。

ところどころにナチス時代の回想シーンが挟み込まれるが時間的には短く、視点は常に現在に引き戻される。思い出で飾られた過去の官能ではなく、今の底の知れない泥沼が描かれる。

元ナチス将校秘密互助会の存在は、恐ろしいが興味を惹かれる。実際にこのような組織があったということだ。

ショーン・コネリー主演「未来惑星ザルドス」

逝去の報に接して、所有していたDVDで「未来惑星ザルドス」を見直した。1974年の作品で、監督はジョン・ブアマン。

この映画のキービジュアルは、岩でできた巨大な人の頭部が空を飛んでいくシーンだ。筆者と同年代ならば、記憶に留めている人は多いと思う。時は2293年の未来。この人の顔をつけた頭(ザルドス)は、支配階級である不死のエターナルと、獣人と呼ばれる寿命を持つ普通の人間とを結ぶ輸送機の役割を果たしていた。獣人から選ばれたエクスターミネーターという名の殺人部隊が、ザルドスから銃を受け取り獣人の数減らしを行っていた。その隊長ゼッド(ショーン・コネリー)は、ザルドスに密航しエターナルのための隔離された土地、ボルテックスに入りこんだ。

エターナルの社会ボルテックスは、映画が制作された時代、1970年代フラワーチルドレンの文化を反映している。時に集団で瞑想し、評決を行ってすべてを決定する。彼らの中には不死のため人生に意欲を見出せなくなり、無気力となった者も数多く存在した。

ザルドスの語源は、「オズの魔法使い」(Wizard of OZ)だった。ゼッドは図書館の廃墟で、この本にすでに接していたのだ。

エターナルの不死性をコントロールしていた演算結晶タバナクルを、ゼッドは打ち破った。エターナルたちは喜んでエクスターミネーターによる殺戮に身を任せた。ゼッドを最初は危険視していた女性エターナル、コンスエラ(シャーロット・ランプリング)は、ゼッドと結ばれ、墜落したザルドスの中で子を成し、二人は老いて朽ち果てていく。ベートーヴェン交響曲第7番第2楽章が流れている。