月別アーカイブ: 2021年5月

アサウラ「シドニアの騎士 きっとありふれた恋」

弐瓶勉のSF漫画・アニメの「シドニアの騎士」をアサウラがノベライゼーションした。弐瓶勉のTwitterで知って読んだ。

既存の「シドニアの騎士」の世界と設定・人物は変わらずシームレスに繋がる。

中性の整備士、金打ヨシと、クローンである仄姉妹の1人、仄燧の淡い恋愛の物語。

作者のアサウラは、「黄色い花の紅」で2006年に集英社からデビューした。デビュー作が今でも心に残る。拳銃が中心のガンアクションで百合の要素もあるが、シングルアクションとダブルアクションの違いもわからない一般人に、丁寧に解説を加えてくれていた。電子版で復刻している。

アニメ映画「シドニアの騎士 あいつむぐほし」の劇場公開が延期された。現在のところ、2021年6月4日が公開予定日だ。

寺山修司「草迷宮」

泉鏡花の同名幻想小説の、寺山修司監督による映画化。DVDを購入して見直した。

寺山の「草迷宮」は全尺40分の映画である。ルイス・ブニュエル監督のシュルレアリスム映画「アンダルシアの犬」(眼科医ならみんな観ていることだろう。映像に興味さえあれば)をプロデュースした高名なフランスのプロデューサー、ピエール・ブロンベルジェが制作したオムニバス映画の一篇として1979年に作られた。日本公開は寺山の死後となる1983年である。

母の唄っていた手毬唄の歌詞を求める主人公、明(あきら)の青年期を若松武が演じモノクロで表現される。明の少年期を三上博史が演じた。三上博史の映画デビュー作だ。カラーで描かれる。現在という視点は浮動し一点には定まらない。

寺山の映画「田園に死す」「上海異人娼館」も、同時に見直した。ちょっとした寺山映画週間だった。泉鏡花の「草迷宮」の再読も果たした。

岩波書店から1981年に出版された鏡花小説・戯曲選第六巻。紙本は重い。映画中、合いの手を入れるように挟み込まれるフレーズが、原作小説から取られたものであることがわかる。