なぜか面白くて1日で読み終わった。その後も、何度となく読み返している。作者は、「灰色のダイエットコカコーラ」の佐藤友哉。
発売日は、2018年9月16日。Twitterでの高評価に導かれて、Amazonから購入・入手したのが2018年9月21日だ。いいスピード感で読書できた。このブログに書くのが、例のとおり遅くなったのは、読んでいなかった太宰治の最初の作品集「晩年」と、すでにその科白を忘れてしまったチェーホフの戯曲(チェーホフの名言が作中大きな役割を果たす)、作者の他の作品などを読んでいたからだ。
目次を書き出すのが一番の内容紹介になると思われる。
序 章 太宰、西暦二〇一七年の東京に転生する
第一章 太宰、モテる
第二章 太宰、心中する
第三章 太宰、自殺する
第四章 太宰、家庭の幸福を語る
第五章 太宰、カプセルホテルを満喫する
第六章 太宰、自分の本を見つける
第七章 太宰、ライトノベルを読む
第八章 太宰、メイドカフェで踊る
第九章 太宰、芥川賞のパーティでつまみ出される
第十章 太宰、インターネットと出会う
第十一章 太宰、芥川賞を欲する
第十二章 太宰、才能を爆発させる
第十三章 太宰、講談社に行く
終 章 太宰、生きる
はやりの転生ものの形をなしてはいるが、読後感はいわゆる「なろう」系ライトノベルとは一線を画している。文体模写に成功してて、まるで、太宰その人が書いた文章を読んでいるようだ。散りばめられた太宰の作品の言葉に気づくたびに、ニヤニヤ笑いが自然と浮かんでくる。意味がそのままでは通らない場所に出合ったら、ググればいい。そこは太宰の引用だ。
坂口安吾が太宰の死後記した「不良少年とキリスト」を前にして、仮想座談会が開かれる。この章で扱った内容は重い。でも大丈夫、恨み節は出てくるが、生活を楽しみ、目標を見つけ意欲に満ち溢れることになるから。