ジャン・ジュネ「花のノートルダム」堀口大學訳

さて、自分に大きな影響を与えた本の紹介、2冊目を投稿します。孤児で、泥棒、同性愛者のジュネが、監獄の中で記した処女作の小説です。

「花のノートルダム」を読んだのは、筆者が高校生の時です。我が国では60年代から70年代前半まで、実存主義の流行がありました。哲学者のジャン=ポール・サルトルが評論「聖ジュネ」で、ジュネを激賛しているという話をきっかけにして、ジュネの作品に親しむようになりました。サルトルの評論の方はまったく目を通していませんので、実存主義的解釈の内容は知りません。

ジュネは言葉を自由奔放に使いこなします。筆者は、それまでは文章は読めても書くことができない。作文の課題はいつも出さずに帰宅。何らかの心理的トラウマの中に閉じ込められていたのですが、「花のノートルダム」を読んで解放されました。自由な文章を書くのなら、言葉は現実にこだわる必要はなく、お気に召すままでいいんです。

ベトベトした心の中の本音を晒すのは、かっこ悪くて好きじゃありませんが、ここは少しだけ正直になって書きました。

新潮文庫の表紙絵は、村上芳正の手によるものです。