1982年のリドリー・スコット監督の映画「ブレードランナー」の原作がフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」であるが、これと並ぶディックの代表作「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」を読み直した。
「電気羊」を読んだのが、映画「ブレードランナー」を観た後で、同じころに「パーマー・エルドリッチ」を読んだはずなので、1980年代前半以来、約40年ぶりの再読となる。
「電気羊」のあらすじを家人に説明しているうちに、「パーマー・エルドリッチ」と記憶がごっちゃになっていることに気づいたので、2冊とも読み直したのだ。
「ブレードランナー」の中で、強力わかもとの映像で飛行船が宇宙移民の半ば強制的な宣伝をしていた。移民の実際の生活を描いたのが「パーマー・エルドリッチ」だ。火星の開拓地の穴ぐらの中で、バービー人形のようなパーキーパット人形とその小道具のセットにドラッグの力で没入し、環境破壊前の幸せな地球の生活を疑似体験する。移民たちはこれでぎりぎりの精神の均衡を維持しているのだった。
プロキシマ星系から帰還した実業家パーマー・エルドリッチが、新しいドラッグ「チューZ」をもたらした。しかし、チューZを1度でも使用すると、パーマー・エルドリッチの幻影、あるいは実体にずっと付きまとわれることになるのだった。三つのスティグマとは、パーマー・エルドリッチの義手、義歯、義眼を指している。
いろいろな面でディックの代表作の1つだ。