SF作家小川一水の、「老ヴォールの惑星」に続く傑作短篇集。表題作が一番気に入った。
火星基地で、高度文明を持つ異星人とあっけないファーストコンタクトを果たす。これでいいのかと思えるほどの安易さで、人類は次のステップに進んでいく。
劉慈欣の「三体」3部作がSFファンの心に残した、異星人不信のトラウマは大きかった。アンディ・ウィアーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(2022年1月20日投稿)のような、成功裏に進んだファーストコンタクトの話に飢えている人は少なくないと思われる。
小川一水の短編でシリアスな感動を望むなら、「老ヴォールの惑星」の中の「漂った男」が必読の作品だ。第37回星雲賞日本短編部門を受賞。2005年8月に出版されていて、筆者は2006年8月に短編集とともに読了した。