ナスターシャ・キンスキー主演「ハーレム」

1985年の作品である。筆者の最も敬愛する女優ナスターシャ・キンスキーが、最高に美しい時に撮られた映画として、記憶に染み付いている。彼女の出演作はほとんど観ているので、好きな作品は数多く列挙できる。筆頭に来るのは、やはりロマン・ポランスキー監督の「テス」なのだが。

「ハーレム」は、長らくDVD化されなくて中古VHSしか持っていなかった。いつの間にか、2020年9月にDVD、BDが出ていたが気づかなかった。今回価格を下げて新盤が出たので、BDを買って見直した。

ニューヨーク、ウォール街で働くダイアンは、突然何者かに誘拐された。目が覚めるとそこは砂漠の中の城。石油王のハーレムだった。

物静かで知的な石油王セリムは、映画「ガンジー」(1982)でマハトマ・ガンジーを演ったベン・キングズレーだ。今見るとどうしてもガンジーの姿が重なってしまう。「ハーレム」を最初に観たときは、まだ「ガンジー」を観ていなかったのだろう。

ハーレムという言葉から筆者が夢想するものや、VHSの煽り文句とは舞台設定がかなり異なる。セリムが父親から相続したハーレムのメンバーは、父親の親族が多く、絶対的な服従関係など存在しない。官能に溺れることなく、ダイアンとセリムの淡い純愛物語が紡がれる。そして、このハーレムはもろく簡単に壊れていく。

監督はアルテュール・ジョフェ。フランス映画である。