ケン・ラッセル「肉体の悪魔」(1971)

レーモン・ラディゲの小説とは無関係。17世紀のフランスで起こった「ルーダンの悪魔憑き事件」を題材としたケン・ラッセル監督の映画。日本国内ではDVDは未発売。1971年の公開時、筆者は中学生、映画館で観て深く心に刻まれた。おそらくVHSだろうが、YouTubeで題名を変えて字幕付きで公開されていた時があった。その際保存した映像を見直した。

ケン・ラッセルの映画では、1974年の「マーラー」、1975年の「トミー」も好きだが、「肉体の悪魔」が筆者にとっては最高傑作である。DVDが制作されないのは、カトリック教会の反発を懸念しているためだろうか。

フランスの地方都市ルーダンの市長代理を務めるグランディエ司祭はカリスマ的リーダーシップとともに、男性的魅力を存分に発揮していた。パリの宮廷では枢機卿リシュリューが実権を握り、新教徒の台頭を防ぐため地方都市の自治を廃止させようとしていた。グランディエは女子修道院の尼僧たちにも憧れの的だった。背中が醜く曲がった修道院長ジャンヌは一方的な恋心から、淫らな妄想を思い描いていた。嫉妬からグランディエを悪魔つかいだと騒ぎ立てたジャンヌが、グランディエ失脚に利用され、悪魔憑き騒動の拷問同然な調査が始まった。行き着く果ては、グランディエの火炙り処刑。

性描写、残酷描写、冒涜的イメージの氾濫が本作品を、宗教権力に対する反体制映画にしている。