饗庭淵「対怪異アンドロイド開発研究室」

小学生のころ、手塚治虫の漫画「鉄腕アトム」で育った我々の世代は、アイザック・アシモフのロボット工学三原則で、AIとそれを搭載したロボットにより人間は守られていると、つい錯覚してしまう。

本書の主役の怪異調査アンドロイド、アリサは、人間の利益のためではなく、自らの目的のため行動を決定する。

また、アンドロイド開発に数百億円の費用をかけ、その目的は通常の人間には存在すら信じられない怪異の調査である。このアンバランスさは小説や映画でなければ味わえない。一般的には、人類全体の幸福値を上昇させるためには、その費用をどこぞやの戦争の終結に使用した方がコスパがいいとされ、オカルトに使うような無駄遣いは許されないのだ。

アリサと怪異との会話で特に気に入ったところを引用する。第1章だ。

「おばけは怖くありません。機械(アンドロイド)ですから」

「マジ? 俺iPhoneだからなあ」

第1部は書籍化している。第1部、第2部ともに、カクヨムのサイトで無料で読むことができる。