鷹匠裕「聖火の熱源」

業界第2位の広告会社を定年退職した後、小説家としてデビューした大学時代からの友人の新作小説です。

以下に、紙本の帯にある内容紹介をそのまま引用。

2024年8月、アメリカ西海岸で大地震が発生。28年のロサンゼルス夏季五輪の開催が困難になり、東京代替開催案が浮上する。スポーツマネジメント会社社長の猪野一斗は、古巣の広告代理店のゴーマン常務に命じられて代替開催に奔走することに。史上最大1000億円クラウドファンディングの実施、ARを駆使した画期的な体験型観戦など、選手と観客と運営が三位一体となった「夢の祭典」を実現させるために、4人の会社でスポーツ利権と真っ向勝負する。一斗はコロナ禍と裏金問題で呪われた東京2020の汚名を返上できるのか。

再び、作者の慣れ親しんだ広告業界の闇が基盤となっています。ついこの間パリ五輪が終わったばかりの、現在と接した時を舞台としたビジネス小説。しかし、電通が汚職、談合と好き勝手やってめちゃくちゃになったという実感を、一般人である我々はもっていません。

あらすじでは4人ということが強調されますが、視点は常に主人公の猪野一斗にあります。群像劇のスタイルにするかと思いましたが、そういう気はなかったようです。

星野勝之の装画が暑苦しい絵なのは、編集者の意向と作者が言ってました。本来は聖火台で燃えてるのは水素ガスで、無色透明な炎のはずなんですが。東京2020の時のように、炭酸ナトリウムで黄色に染め続けているのでしょうか。