2016年10月2日、神奈川芸術劇場、中スタジオで、塩田千春のインスタレーション、「鍵のかかった部屋」を観ました。2015年、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に日本代表作家として出品し高い評価を得た《掌の鍵》を、帰国記念展として再構成した新作です。使われたのは、15,000個の鍵、3,000ロールの赤い糸、5つの扉。
赤い糸は血管、血液を連想させ、5つの扉を抜けて巨大生物の体内を経巡る思いをもたらします。また、空間に直立した扉は異世界への入り口であり、ここを抜けると2度と元の世界に帰れないという幼少期に心の奥に刷り込まれた恐怖を呼び起こします。吊るされた15,000個の鍵は、実際に人が使用していたもので全世界から集められたそうです。
写真撮影は自由でした。観客も多く勇気づけられましたが、もし他に誰もいなかったなら、通り抜けた扉の順番を逆になぞって、必ず元の世界に帰れるように移動したことでしょう。しかし、このように行動しても位相のずれが生じてしまって、どうしても異世界に留まることになる宿命が待ち受けていそうでした。