ヒラリー・スワンク「アメリア 永遠の翼」

現実のアメリア・イアハートとロッキード・エレクトラ

ミリオンダラー・ベイビーでオスカーを受賞したヒラリー・スワンクが、アメリア・イアハートを演じる伝記映画「アメリア 永遠の翼」(2009)を動画配信で視聴した。監督はミーラー・ナーイル。

1つ前に投稿したクリストファー・プリーストの「隣接界」で、もっとも印象深かったのが女飛行機乗りについて書かれた部分だったので、映像作品を探していて出会った。

アメリア・イアハートは、1932年に女性として初めて大西洋単独横断飛行を成し遂げたことで知られる、米国の代表的国民ヒロインの1人である。赤道上世界一周飛行にロッキード・エレクトラ10Eで挑戦中、1937年7月2日、給油のため太平洋にある米国領のハウランド島を目指していたが消息を絶った。現在は無人島であるこの島は、当時は入植が試みられていたようだ。

長距離飛行がまだ冒険の時代であり、資金集めに奔走し、その上で挑戦を続けたことが映画に描かれている。民間企業も軍の管轄下に置かれていた我が国とは異なり、個人が飛行機を購入して挑んでいたことに驚きを感じる。

このブログの筆者の父親は、戦前からの飛行機設計技師だった。1939年に東大の航空学科を卒業し、同期生は全部で9人である。当時は就職先も海軍が決めていたと聞いた。昭和飛行機での最初の仕事は、名機ダグラスDC-3のノックダウン生産だ。世界で最初の本格的商業旅客機と言われる、ダグラスDC-3は1936年の運用開始である。DC-3はエレクトラよりも航続距離が長いことを考えると、アメリアの運命は残念でしかない。エレクトラに行った改造、増設燃料タンクの設置はDC-3でも必要となっただろうが。

映画は戦闘機乗りのような激しい機動はなく、空撮部分は優雅な俯瞰映像に満ちている。アメリアの服装も、戦時中の飛行士とは異なる。「風の谷のナウシカ」のようなスピード感溢れる映像を期待してはいけない。